第7回 初夏の林床に輝く宝石のようなハムシの話 〜沖縄の海と山の推しメン紹介〜
「沖縄の海と山の推しメン紹介」というサブタイトルなので、そろそろ推し虫の話でもしましょう。その昆虫は初夏の沖縄の林床に現れます。最大10mmの虫と聞くと小さいと感じるかもしれませんが、でもハムシの仲間としてはとびきり大きい方で、他の多くのハムシとちがって脚ががっしりと太いのもあってボリューム感があります。そして何より、全身が深い緑色〜青碧(あおみどり)に強く輝きます。名をオオミドリサルハムシといいます。
![キュリオス3](https://tsu-tan.jp/wp-content/uploads/2023/05/キュリオス3.jpg)
どこでも見られるかというとそうでもありませんが、シーズンになれば珍しい虫というわけではなく、見かける数も少なくありません。オオミドリサルハムシが食草としているリュウキュウテイカカズラの若い葉っぱに表面だけ削がれたような食べ痕があれば、周辺にいる確率大です。
![キュリオス2](https://tsu-tan.jp/wp-content/uploads/2023/05/キュリオス2.jpg)
図鑑などには成虫が現れるのは3月〜8月とありますが、私のよく行くフィールドでは発生のピークは5−6月の初夏で、本格的に暑くなってくると見なくなるという印象です。毎年この輝きが見たくて、シーズンになるとそれとなくお客さんを誘導してリュウキュウテイカカズラの茂った林床を探してしまいます。ツアー終了後、カメラを持っているときは写真に挑戦したりもしていますが、でもなかなかこの緑を撮るのは難しく、フラッシュを焚くと独特の青みが出ないし、自然光で撮ろうとすると明るさが足りなくて、毎回「実物はほんとうに綺麗なんだけどな」と言いながら撮影ポイントを後にするのですが、でもシーズンが来るとまた懲りずに撮りたくなります。
![キュリオス1](https://tsu-tan.jp/wp-content/uploads/2023/05/キュリオス1.jpg)
リュウキュウテイカカズラの葉に残された食痕と食べた虫
![キュリオス5](https://tsu-tan.jp/wp-content/uploads/2023/05/キュリオス5.jpg)
リュウキュウテイカカズラはキョウチクトウ科のつる性の植物で、盛夏に風車のような白い花をつける。
こういう虫に着目していると、いまいち季節感がないと言われる沖縄でも自然はしっかりと季節を刻んでいるなということが実感できます。また、オオミドリサルハムシを探そうとなるとリュウキュウテイカカズラを探すことになり、必然的によく行く森ではどのんへんに生えているか、どんな環境を好むのかに詳しくなってきます。このようにして、ひとつの生き物に注目して芋づる式に自然のいろいろなことが分かってくるのも楽しいものです。
![キュリオス4](https://tsu-tan.jp/wp-content/uploads/2023/05/キュリオス4.jpg)
♀(左)と♂(右)。分かりにくいがよく見ると前から2対の脚が♀より大きい
![スクリーンショット 2022-05-25 6.33.35](https://tsu-tan.jp/wp-content/uploads/2022/05/スクリーンショット-2022-05-25-6.33.35.png)
Miyazaki Yu
生き物とそのウンチクが大好きなヒゲのガイド。 「キュリオス沖縄」は、沖縄県内の海や森などのフィールドでネイチャーツアーのサービスを提供しています。キュリオス沖縄のツアーは、自然の中を歩きながら生き物や環境を観察したり、その形や生態について考えたりする「インドアなアウトドア」スタイル。ガイドは基本的に専門過程で学習・研究経験のある「生き物好き」が務めます。このほか、県内のさまざまな自然・生物多様性に関する普及啓発などの事業をお手伝いさせていただいています。
一般社団法人 キュリオス沖縄
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